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「判断しない」判断の理由とは?国と沖縄の元調停役語る

朝日新聞デジタル - 2月23日(火) 20時0分

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(朝日新聞デジタル)

 国と沖縄県が5年以上、終わりの見えない争いを続けている。米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設にかかわる行政手続きや法廷闘争だ。実は当初、国の委員会が混迷を予測し、話し合いを呼びかける異例の決定を出していた。「国と県、両方の姿勢を見て『これじゃまずい』と思った」。当時の委員長が朝日新聞の取材に対し、決定に至った経緯やその狙いを明かし、現状への歯がゆさを語った。
 1、2月に2度、オンラインのインタビューに応じたのは、行政法の専門家で国地方係争処理委員会(係争委)の元委員長、小早川光郎・成蹊大法務研究科長。係争委は、地方分権改革の一環で設けられ、地方自治体に対する国の対応が違法かどうか判断する総務省の第三者機関で、小早川さんは制度設計にもかかわった。委員長だった2015年と16年に米軍普天間飛行場(宜野湾市)の辺野古移設問題を2件扱い、16年6月には国と県のどちらの主張が正しいか、判断しないという決定を出した。「異例の判断をした責任がある。求められれば説明したい」と取材に応じた理由を語った。
 移設計画を巡り、工事を進める国と阻止したい沖縄県の間では、裁判だけで15年以降9件あり、今月3日も県敗訴の判決が出た。「法的な白黒をつけようと次々やっている状態が続いていることは、進歩がないと感じます」。小早川さんはそう口にした。
 16年6月の係争委は、いまの状況を予言するような判断を下していた。
 《両者の立場が対立するこの論点について、議論を深めるための共通の基盤づくりが不十分。このままであれば、紛争は今後も継続する可能性が高い》
 当時は、移設に反対する知事(故翁長雄志氏)が前知事が出した埋め立て承認を取り消したことを皮切りに、国と県による争いが始まっていた。国の対抗手段は違法だとして、県が係争委に審査を申し出た。
 小早川さんは、地方自治法などを専門とする立場から、国と県は本来、最低限の信頼関係を持って、歩み寄れる点は歩み寄るべきだととらえてきた。だが、審査の中で、両者にその姿勢はみられなかったという。
 「これじゃまずい。どっちが正しいかと言うことで、にっちもさっちもいかなくなるのではないか」。そう思い、決定文では、話し合いの必要性を強調した。
 《普天間飛行場返還という共通目標の実現に向けて真摯(しんし)に協議することが、問題解決に向けて最善の道》
 一方、係争委の限界も感じた、とも明かす。
 15年に審理したのは、県の対応について、防衛省が行政不服審査法を使って国土交通相に不服を申し立てた手続きの是非。「この手続きは国民救済のためで、防衛省に資格はない」「『国』が『国』に判断を仰ぐのは公正ではない」などと専門家からも批判がでた手法だ。
■「政府は汗をかいて説明するしか」
 小早川さんによると、係争委内にも、国の手法を疑問視する意見があったという。ただ、係争委は国の一機関で、「(防衛省の申し立てを認めた)国交相と違う法解釈をもとに審査していいのか、という問題にぶち当たった」。結局、国交相の解釈に「疑問も生じる」と言及しつつ、一見して明らかに不合理だとまでは言うことができないとして、県の訴えを退けた。
 一連の審理を通して、小早川さんは県の主張の背景にあるものを感じた。「沖縄は、全国で担うべき安全保障上の負担を集中的に負わされている。それは普天間から辺野古への移転では変わらないじゃないか、という気持ちは強く感じた」。さらに、琉球王国だった沖縄が日本の政治システムに組み込まれた明治初期の「琉球処分」以降の歴史の積み重ねも影響しているのではないか、と。
 16年の異例の決定にあたり小早川さんの念頭には、そうした沖縄固有の状況まで踏まえて、政府は話し合いをするべきだという考えがあったという。だが、決定が指摘した通り、国と県の「紛争」は続いている。県の負けが確定した裁判もあるが、あくまでその時々の県や国の手続きの是非が問われただけで、今後も別の手続きを巡り新たな裁判になる可能性がある。

 

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