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息子奪った危険ドラッグ運転、事故映像が伝える恐ろしさ

朝日新聞デジタル - 9月11日(水) 15時40分

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(朝日新聞デジタル)

 少しだけ立ち止まって考えてみてほしい。もし、あなたの大切な人が交通事故で突然いなくなってしまったら。加害者のドライバーが違法な薬物を吸っていたとわかったら——。結婚してわずか18日後、息子の命は突然奪われた。あれから5年。やり場のない憤りをどうすればいいのだろう。伝え続けるしかない、この思いを。父はそう誓った。(田中奏子)
 信号が青になって数秒後。黒い車が猛スピードで交差点に突入していく。中央線をはみ出し、対向車線の車に次々に衝突。あたりは砂ぼこりに包まれ、衝撃の大きさを物語る。飛ばされ、浮き上がった車に、消防士の川上育也さん(当時25)は乗っていた。
 昨年6月、塩尻市で学校の教員らを対象に開かれた講演会。ドライブレコーダーの映像を見ていた人たちが息をのんだ。
 「危険ドラッグによってどんなことが起きてしまうのか。事故がその結果です。被害者も加害者も、お互いに地獄のような日々になるのです」
 育也さんの父、哲義さん(62)は静かに訴えた。
 事故は2014年5月14日午前11時50分ごろ、長野県中野市の県道交差点付近で起きた。裁判資料によると、車を運転していた当時19歳の少年は直前、車内で危険ドラッグを吸っていた。手足が伸びた状態で硬直し、アクセルを踏み込んだまま意識を失った。車は時速120キロ以上で暴走し、交差点に突っ込んだ。育也さんの命を奪い、2人に重軽傷を負わせた。
 育也さんは夜勤を終えて帰宅途中で、ほぼ即死だった。学生時代から付き合っていた女性と婚姻届を提出したのは事故の18日前。4カ月後には結婚式を開くはずだった。保育園の頃からの夢だった消防士になって3年。人生で一番幸せな時だった。
■直視できない、でも…
 自分には何ができるのだろうか——。事故後、哲義さんは考えた。「こんな事故は二度と起きてほしくない」。違法薬物の根絶を訴えるしかないと思った。
 そんなとき、社会貢献に取り組む大阪府のロータリークラブから、違法薬物撲滅のための啓発用DVDに、事故の瞬間が映るドライブレコーダーの映像を使わせてもらえないかと依頼を受けた。ただ、その映像を見るのはつらかった。直視することもできなかった。
 でも、どんな言葉よりもこの映像が薬物の恐ろしさを伝えてくれるのではないか。そう考え、DVD作成に協力し、自らの講演でも流すようになった。
 いま、危険ドラッグの摘発は激減している。でも、いつかまた広まるかもしれない。子どもたちの教育に活用してもらおうと、別の交通事故の被害者遺族とともに厚生労働省にDVDを贈った。講演も続けていくつもりだ。
 息子を突然失って5年。あっという間だった気がする。暴走した男らの実刑判決は確定したが、民事上の賠償責任を問う手続きはまだ終わっていない。「全てが終わったら、もう少し落ち着いて考えられるようになるのかもしれませんね」
 中野市の現場近くには、事故直後に設けられた献花台が今も残る。育也さんを悼むように、消防車のおもちゃが供えられていた。

 

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