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アリエナクナイ科学ノ教科書:第25回 心理トリック入門

Discovery Channel - 5月21日(火)

今回はちょっと科学から離れているようで、最も身近な現象でもある「心理」を取り扱う。

推理ミステリーや、サスペンスなどでも駆け引き、そして犯人の自供なんてのはドラマの核となるわけですが、そんな人間の感情なんて科学で説明できない・・・と思われていたのは昔の話、人間は常にすべてを理知的に考えて判断できるわけではないので、「人間の習性」というものが存在することは昔から薄々知られており、それを学問にまで発展させたのが社会人類学や文化人類学に認知心理学、行動心理学・・・etcといった学問です。

日本ではそうした心理系学科は文系というカテゴリーですが、そもそも「文系・理系」というカテゴリーを勝手に作ってるのは日本などの極めて少ない国ですから、理系の範囲ではない・・・みたいな考えも完全な思い違いです。

さて、そんなどうでもいいウンチクはおいといて、人は思っている以上に「無意識」です。
例えば、今、この文章を読んでいるとき、当然周りより意識はこちらに集中しているはずです。

そうすると、それ以外の反応には使える心理的余裕が限られますよね。もし今、電車の中でスマホでこの記事を読んでいるとしたら、電車のアナウンスが聞こえているのに乗り過ごすかもしれないし、誰かの足を踏んでいることに気がついてないかもしれません。もしかしたら横の人が覗いているかも。

つまり、1つの事柄にタスクをもっていかれると、他が疎かになります。そうした無意識や、刷り込みを如何に利益に誘導するか・・・・これが現代社会の根幹でもあったりします。

テレビのCMや看板、ブラウジング中のウザい広告、はたまた有名インスタグラマーによるステマなどから、インチキ教材の押し売り、啓発セミナー、怪しい新興宗教、あらゆるところに人の心理のスキマを突いて自らの利益へと誘導しようとするカラクリに世界は満ちあふれています。別に悪いことではないですが、そうしたものに溢れているという意識をもつかどうかは賢く生きていく上では大事です。

閑話休題。

話が大きくなりすぎてしまいましたが、そうした商売の根幹も心理トリックなわけです。そうした心理誘導、こうした心理トリックをちょっと意識するだけでミステリーの駆け引きから、町中の広告まで、ちょっと1枚裏をめくって思いを巡らすことが出来るようになるかも・・・しれませんよ。

・・・・という読ませようという心理誘導(笑)

●いろいろなそれっぽい言葉

バーナム効果や、レイク・ウォビゴン効果、囚人のジレンマに、サブリミナル効果、ツァイガルニク効果などなどそれっぽい言葉がいっぱいあります。

それらの細かい解説をしていくと別の本になってしまいますので、あくまでそうしたものの実例と、お話作りに役立ちそうなものをメインに解説していきましょう。

これは以前解説した「霊能者の話術」ともつながってくるので、まだ読んでいない人はそちらもあわせてあとで読んでみてください。
参照記事:アリエナクナイ科学ノ教科書:第5回 霊能者の話術

まず、心理戦において「適当に適当ではないことを言う」ってカマをかけ、「相手から情報を聞き出すための心理的な揺さぶり」で相手を見定め、さらには「自分が求める解答を相手が選んだかのように思わせ答えさせる」といった心理的な虚をついていくというのがおおざっぱな心理戦ドラマです。

本講は、あくまでフィクションの上でおもしろくするための、それらのテクニックをいくつかまとめてみたいとおもいます。

●相手から信用を得る

「お前が犯人だろ」といきなり疑ってかかり、しかも「俺はお前を地獄に送る!」という憎悪をメキメキと出している相手に、人間は心を許しません(笑) 当たり前ですねw。

相手から情報を引き出すには、まずは話してもらえる間柄になることです。これは社会的な人付き合いの基本でもあり、セールスなどにも応用されています。

アメリカの社会学者、1966年にフリードマンとフレイザーによる実験がちょうど当てはまりそうです。

この実験では、「安全運転の看板を貴方の庭に立てさせてください」というお願いです。

庭は狭くなるし景観も悪くなります。普通はお断りです。やっぱり承諾率は17%と低い傾向でした。

しかし、「安全運転のステッカーを車に貼ってもらえませんか」という事前のお願いを行い、承諾をしてくれた住民に対して、上記のお願いをすると76%が承諾した・・・という結果が得られています。
これは小さなお願いを聞いたのに、次の案件を断ると自分が嫌な人と思われる・・・という心理のくすぐりも中に入っています。

この方式はソシャゲなどにもしれっと採用されてます。デイリーログインなどのアプリを起動するだけで課金アイテムを手に入れるチケットが手に入る・・・ほんの少しチケットを使うだけですごい楽ができる、そうすればたまには課金してもいいよね・・・と財布が緩む。これも同じからくりです。

小さなお願い、相手にとって造作も無いお願いを達成してもらい、そのリワードとして仲良くなる・・・あれ? 相手にとって得しかない。でも人間の無意識はこうなりやすいのです。

例えば、高いゲーム機を買って欲しい場合「~というゲーム機を買って」といきなり言うのでは無く、「宿題をやったから やる気を出すために100円ちょうだい」というお願いをステップアップして、「テストで全部平均点とったら ゲーム機を買って」と自分の努力とリワードを重ねていくとお互いに気持ちよい取引となる・・・という応用もあります。

逆に相手の不安感を逆手にとって信用を得るという方法もあります。

これは啓発セミナーやマルチ商売、怪しいビジネスセミナーなどでよく見られる手法で、集団のサクラの中で「ターゲットだけを浮いた状態にさせる」そうすると、人間は自分がおかしいと思っていてもまわりに同調するという性質があり、そこから相手を誘導していく・・・という手法です。相手のプライドなどをくすぐってやると人間は非常にアッサリと崩れます。

例えば「このファッション、お洒落な人はもう誰でもしてるよ~ XXさんはファッションに強そうなのにコレは知らなかったんだ~」みたいに擽られるとプライドが相手の罠へ落としこんできます。
「トップセールスの会社はこれを使っています、貴方の会社がうまくいってないのはやはり使ってないからですね・・・・」とか相手のライバル視している相手を引き合いに出すとか、それこそ無限に手はあります。ソシャゲに友達とスコアを競わせる機能が付いていることが多いのもコレです(笑)

この不安感を与えて操縦するというテクニックは身近な人にやると間違いなく嫌われるので悪手の1つですのでお忘れ無きよう(笑) 意外と無意識でやってる人も多く、だいたい嫌われています。

●心理的ゆさぶり

いわゆるミステリー定番の「カマかけ」です。

まず一番ありがちなのが「脅し」によるカマかけです。これは社会実験でも悪手であることが知られており、例えばタバコを止めさせたい相手に対して、延々とタバコの有害性を説いた場合と、衛生的に悪い(汚い)程度の話をして有害性はしれっとしか触れない場合では、禁煙に踏み切る人は後者の方が多いということが知られています。一見、脅かされたらさぞかし同じ行動をしなくなるだろうと思いますが、現実はその逆。つまり、脅しによる誘導は本当に相手が焦っている状況でのみ機能して、それ以外は説教くさい嫌なヤツで終わってしまうということです。

次に相手の本音を引き出すために、使われるのが、敢えて相手に間違った情報を与えて心理的な揺さぶりをかけるといったものです。
例えば、犯人が午後6時に犯行をしていた場合に、すでにその目星がついている相手に「ただの関係者の調書です」といった形で安心をさせ「犯行はおそらく7時以降に行われています なので7時以降のアリバイを教えてください」といった形で「捜査がすでに失敗しているという優良誤認をおこさせ、その慢心の虚を突いていく」といったテクニックがミステリーなどでよくみられます。

また心理的に揺さぶりをかける場合、了承を曖昧にするという手もあります。
例えば、悪質な募金などによくある手で「一口500円で募金を行ってます、この募金は~~~」と長い説明をし、めんどくささから相手が500円だけで逃れようとするまで追い詰め、「じゃあ500円なら」
と言ったらたたみかけるように「募金ありがとうございます!」と言って、「募金は3口からになってますので・・・」としれっと話をすげかけるといった方法です。

ただ、無意識の相手ならともかく、相手が身構えているとなると、それは非常に難しくなるのですが、それさえも崩す方法があります。
例えば、警察の取り調べなどでは「鬼の尋問官 と 親身になって優しくしてくれる人」の2本立てで尋問を行います。鬼の尋問官はあくまで責め立てるだけで、そこから自供を得ようとは思っていません。そこでストレスを与え親身になって優しくしてくれる人の出現で、鬼の尋問官を「俺はあいつのやり方は悪だと思う」みたいにして「仲間意識」を持たせることで心理的に依存させ、その結果、自供を得るという方法です。この方法は効率的すぎて並の人間は「犯してない罪でさえ認めてしまう」のはえん罪事件のニュースでもご存じの通りです。

ミステリーでは、絞り込んだ犯人をあぶり出すために、わざと関係の無い事件を起こして、その動揺具合を見たり、嘘の情報を流すことでその反応を見る・・・という形で使われます。

●自分が求める解答を相手が選ぶ

ここまでくるともはやどちらが悪か分からないレベルの駆け引きですが、世の中ではわりと当たり前に行われていて、我々も知らず知らずの間にその誘導を受けています。
例えばSNSのターゲッティング広告というものは、その人の趣味趣向を分析し、それに合わせた広告をぶつけ、さらには、その人の感情を揺さぶりそうなニュースを流し、クリック率を上げようとしています。
自分が選んだのに実は選ばされていた。

有名なものはマジシャンズセレクトと呼ばれるメンタルマジックです。

例えば以下の言葉の中から1つ選んでください

高層ビル 夜  金  炭 夏休み 種 ハンコ 契約書

選んだらその単語と関係のあるものを1つ選んでください

夜景 光 イチゴ 朱肉 ラッコ 蕎麦

選んだ言葉の特徴1つ選んでください

安い 美しい 筆 赤色 緑色 残飯

選んだ言葉とつながりがある言葉を1つ選んでください
ナス ルビー 鼻毛 爆竹 ブラックホール

最後に貴方が選んだ言葉は「ルビー」ですね?
これは答えがルビーになるように要素を分解していき、誘導しただけです。

ルビー
美しい 赤色
夜景 光 イチゴ 朱肉
高層ビル 夜  金  炭素 夏休み 種 ハンコ 契約書

と、答えを作り、あとは適当なノイズに紛れさせて「相手に選ばせたけど、自分が選んだ答えに誘導する」という手法です。

もはや完全な誘導尋問であり、ここまでくると犯人は誰でも良くなってしまうので、ミステリーにはあまり使われません(笑)

ともあれ、そうしたメンタルマジックというジャンルがあって、応用次第では人の気持ちは簡単に変わってしまう・・・ということは覚えておいて損はないかもしれません。

くられ

*Discovery認定コントリビューター

サイエンスライター、Youtuber、大学講師第など幅広く活躍。「アリエナクナイ科学ノ教科書」(ソシム)日本SF大会主催 49回 星雲賞ノンフィクションを受賞。近著は化学の生化学の入門を楽しいキャラで学べる「毒物ずかん」(化学同人)、アリエナイ理科ノ大事典(三才ブックス)薬理凶室名義 などがある。現在週刊少年ジャンプ連載中の「Dr.STONE」では科学監修を務める。

https://www.cl20.jp/portal/

タイトルイラスト:夢路キリコ http://www.yumejikiriko.com/

(2019/05/21)
 

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