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アリエナクナイ科学ノ教科書:第24回 アリエナクナイ特殊能力 後編 スーパーセンス 超感覚の世界

Discovery Channel - 5月14日(火)

前回に引き続き、人間以外の動物に備わった「超・感覚(スーパーセンス)」を見てきたわけですが、今回は、尋常ではない筋力や耐久性、再生力などを紹介したいと思います。

耐久性といえば、どんな状況でもやりすごすクマムシなどが有名ですが、クマムシは常にどんな状況でも強いわけではなく、乾眠という無代謝状態での耐久性の話なのですが、それはそれですごい能力であり、脊椎動物の我々からすると想像も不可能なものが多いです。

●乾眠・冬眠・再生

人間は乾燥状態になって何百年もやり過ごすみたいな映画のミイラ男みたいな真似はできません。これを実地でいくのが乾眠と呼ばれる方法を体得しているクマムシという生き物です。
クマムシは緩歩動物門にあたる生物群で、DNA解析では節足動物(昆虫やエビカニ、サソリ等)と環形動物(ミミズやゴカイなど)の中間的な立ち位置にあり線虫あたりから分家し脚を手に入れ始めた生物群でカギムシにも比較的近いようです。

ともあれ、体の水分量を3%以下まで脱水して150℃の高温から絶対零度、致死的な放射線、真空から超高圧の状態にまで生物としては凄まじい耐久性を誇ります。とはいっても、あくまでゆっくりと水分を抜いて仮死状態になってからの状態で、ウネウネ動いているときにそんな極端な環境に晒されるとあっけなく死んでしまいます。

この超耐久性の状態はクマムシだけでなく、田んぼにいるカブトエビの卵などもそうで、これらの無代謝の状態をクリプトビオシス(cryptobiosis)といいます。

乾眠を人類に適応するにはちょっと構造が複雑すぎてフィクションよりファンタジーになってしまいそうですが、冬眠くらいであればもしかすると未来の技術で実現可能になるかもしれない。
冬眠なんか何の役にたつんだと思われそうだが、例えば宇宙での長期間の旅行などでコールドスリープという形でSFではおなじみだが、そんな宇宙船もない現代には不要な技術に思えます、しかし現在では治療法のない病気も冬眠状態で未来に送ることで治療するということも可能になる可能性もあります。
リスやネズミのような動物だけでなく、クマのような大型動物でさえ、代謝を限りなく抑えて体温を下げ、備蓄栄養だけで筋力低下なども起こさずに厳しい季節を寝飛ばすわけで、これらのホルモンなどのメカニズム解明がされれば、例えば冷蔵庫のような装置に病気のおじいちゃんを入れ、最低限の栄養と冬眠維持ホルモンのプリンターのカートリッジのようなものを1年か数年に1回交換するだけで、あとはマジで冷蔵庫と同じ扱いで保管できるような装置は実現可能になるかもしれません。
その場合の年齢や年金の扱いなどは一切わかりませんが(笑)

ちなみに再生能力。例えばプラナリアのような体の構造が簡単な扁平動物などが体を半分にしても分裂して増えることはよく知られています。
しかし、高等な動物になればなるほどその再生能力はどんどん無くなっていきます。これは単純にその生物の生存コストにその「再生」が見合わないからです。生物学的に見れば人間の腕や足でさえおそらく周辺組織が脱分化(一端細胞が何にでもなれる万能細胞化して組織を再構築しはじめること)して再生するのは脊椎動物でも可能ではないかと考えられてます。カエルやサンショウウオといった比較的進化した脊椎動物ではよく見られることですし、近年、ゼブラフィッシュと呼ばれる熱帯魚店でも流通しているポピュラーな魚に心臓が2割欠損しても心筋自体が脱分化して再生するということが話題となりました。

先の「コストに見合わない」というのはどういうことかというと、生物にはだいたい個体ごとの「適正寿命」があります。そして生物は限られたリソースの中でより強い遺伝子を次に残すという命題の元生命活動を行ってます。
例えば、人間は他の動物に比べて非常に成長の遅い動物です。猫や犬が1年くらいで繁殖可能になるのに比べて、妊娠可能になるのに十数年かかります。そもそも体のサイズの変化のスピードもかなり遅い部類です。なので、限られたリソースの中で大規模な再生能力を備えるのはおそらく何らかの不具合が出やすいということなのでしょう。

仮に人間の腕や足を再分化させて生やすことが可能になったとしても、まずは0歳児の未熟な手足が生えてきて、それが十数年の時を経てようやく成人サイズに戻る・・・というだいぶ遠大な再生計画になるわけです。仮に40歳で手を失った人が15年かけて再生したとすると、再生した片手だけピカピカの15歳という状態になるわけです。また子供の手が不器用なのはそこに通う神経を脳がまだ完全に制御しきれていないからで、普段使いできる子供の手レベルになるのさえ相当な時間がかかりそうです。

故にSF的にそうした手足の再生設定を組むのであれば、成長の早い遺伝子を組み込んでいる・・・とか、いっそ自分の細胞を外で大量に育てて、それを3Dプリンター的に印刷して、そしてつなげるというのが「現実的」かもしれません。(もちろん神経をがんばってつないだとしても、それをしっかり扱えるようになるには相当な訓練が必要でしょう)

●超耐久性

では本題の超絶耐久性についていってみましょう。

基本的に人間以外の動物の筋力はすでに超人のそれで、柴犬サイズのツキノワグマが屋内に侵入してきて体重50キロ近い老婆の脚に噛みつき首を振り回すことでそこら中にたたき付けて即座に絶命させていた事例などもあるので、その顎の力、首の筋力など、如何に鍛えた人間だろうが小さなクマにさえ敵わないといえます(素手の人間は柴犬とどっこいどっこいの戦闘力とされている)。

それが昆虫などの筋力になってくるととてつもないのですが、あくまで体が小さいから重力の影響が少ないというものであり、そのままサイズアップすれば最強・・・というわけではありません。
例えば昆虫をそのまま巨大化させると、その筋肉を支えるための外骨格が持たなくなり、当然それをつなぎ止める関節部の負担も膨大でおそらく歩くのも困難です。それは実際に陸上最大のヤシガニ(数十cm)をみても明らかです。
それでも、将来的には遺伝子ドーピングで人類とは根本的に異なる筋力を持った超人が生まれる可能性は不可能ではないと言えます。

限界環境微生物と呼ばれる、極めて過酷な環境に住む微生物がいます。

例えば深海の熱水が噴き出す熱水噴出口。とてつもない水圧なので、そこから吹き出す水温は地上1気圧だと水は100℃で沸騰しますが、水圧が高いので沸騰せず温度が上がります、300℃以上の水が噴出する熱水噴出口からも微生物が発見されています。
この超好熱菌は80℃以上という超高温状態で「元気」になり、120℃という通常、「滅菌」に用いられる温度においても元気に増殖をするということが確認されています。

どうして酸やアルカリ、そして熱や極低温が生物によくないのでしょう?

我々も熱いとか、冷たい、痛いと感じてそれらを避けるように害となります。

理由は簡単で、我々の体を構成している単位である「タンパク質」という物質は、アミノ酸がずらーっとつながった長い長い(当然枝分かれも多数ある)分子です。タンパク質は化学の観点からみると、相当あり得ない無茶をやってのける能力があり、その積み重ねで我々の生命も存在しています。

例えば、化学において空気中の窒素を我々の体を構成する栄養素として取り込むには、まず、数百度数百気圧という高温高圧条件で鉄の触媒の力を借りてようやく窒素と水素をアンモニアにし、さらに白金を触媒にアンモニアから硝酸を作り、それを化学肥料として植物に使ってもらい、その植物を摂取することでようやく空気中の窒素を我々の体に取り込むことができたと言えるわけです。つまり結局は植物の力なくしては空気中の窒素1つ体に取り込むことができないわけです。

一方、マメ科の植物と共生していることの多い根粒菌大気中の窒素をニトロゲナーゼというタンパク質(酵素)で還元してアンモニア態窒素を作り直接栄養源にするというとんでもない一足飛びを行ってしまいます。

こうした化学の定理を無視するかのようなとんでもない処理ができるのがタンパク質の強みなのですが、その非常に高度な構造故に「壊れやすい」という弱点を持ちます。これを「変性」といって、例えば、目玉焼きを作るように生卵をフライパンで加熱すると固まっていきます。これはタンパク質分子が熱というエネルギーを受けすぎて、正常な形を維持できなくなってねじれ壊れてしまう状態です。
タンパク質は基本的に「壊れ物」扱いなのです。

故に、壊れ物で構成されている我々、生物は極端な環境に置かれると死んでしまうわけです。

では、100℃の環境で元気な生物はどうして死なないのでしょう?

そうした生物は細胞を構成する分子自体を耐熱仕様にしています。例えば、我々の細胞の膜はリン酸脂質と呼ばれるもので構成されていて、炭素の長い鎖をエーテル結合という結合でつなげています。しかしこれは高温にさらされると分解しやすいため、好熱菌はエステル結合でむしろ高熱環境で分子がやわらかくなるような耐熱性分子を用意しています。
他にもDNAの修復酵素やタンパク質自体を構成するアミノ酸も耐熱仕様というより、常温では反応しないような組み合わせになっており、高熱仕様となっています。

耐熱の他は飽和食塩水でも脱水せずに生きていけるバクテリア、人間の致死1000倍という高放射能状態にも適応するカビがチェルノブイリ原子炉事故後で発見されていたり、本来地球上に存在しない合金であるジュラルミンを劣化させるカビも航空機の発達により発見された。致命的な高温にも耐える方法を発明するし、放射線もなんとかするし、硫酸も食べれるし、金属ももりもり食べれる・・・ということが分かっており、またマントル近くの岩盤層にもどうやらそうしたバクテリアが生存しているということが分かっていて、それより深いところにもまだ生物がいる可能性もゼロではありません。

そうした生物も、むしろ特殊環境に抵抗してるというよりは、その環境に適応した状態であり、高温に耐えられる生物は逆に我々の常温世界では繁栄できないわけです。
仮に今、隕石でも落ちてきて地上の生物が死滅して、地殻がめくれてそうした環境になったら、彼らは地上で繁栄し、一見地球上から生命がいなくなったようにみえた状態になっても、また何億年とかけていろんな生命に進化していって、また新しい生態系を作るといえます。

そう考えると、この地球というのが生命の惑星であると同時に、それだけ過酷な環境でも生命は残ると考えると、他の星に生命がいない・・・と考える方がむしろアリエナイと最近の生物学者は考えています。

くられ

*Discovery認定コントリビューター

サイエンスライター、Youtuber、大学講師第など幅広く活躍。「アリエナクナイ科学ノ教科書」(ソシム)日本SF大会主催 49回 星雲賞ノンフィクションを受賞。近著は化学の生化学の入門を楽しいキャラで学べる「毒物ずかん」(化学同人)、アリエナイ理科ノ大事典(三才ブックス)薬理凶室名義 などがある。現在週刊少年ジャンプ連載中の「Dr.STONE」では科学監修を務める。

https://www.cl20.jp/portal/

タイトルイラスト:夢路キリコ http://www.yumejikiriko.com/

(2019/05/14)
 

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