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怪魚ハンター小塚拓矢 連載 第3回(全3回)

Discovery Channel - 5月16日(木)

旅とは能動的遭難だと思う。ある時は強盗に銃撃たれ、またある時はマラリヤに倒れ、そんなトラブルこそが楽しくて(?)辺境への旅を続けてきた。いつしかテレビなどのメディアから撮影依頼をいただくようになったけれど、必然的に、旅のリアルは映像には残せないと諦めているーーー。
そんな中、当短期連載への協力を快諾したのは、ある意味で『River Monsters』に対する挑発に他ならない。最終回の今回は、ディスカバリーチャンネルと僕の闘い(?)についてお話ししよう。戦闘機に竹槍で挑むがごとし、むしろ相手にはその存在すら知られていなかったかもしれないが…。

巨大資本vsいち個人。闘いの基本は、まずは“敵”を知ることだ!?所有する私物DVD(英語版、~シーズン3)と書籍(洋書)

ディスカバリーチャンネルが観れなかった我が家では、今回寄稿依頼をいただく何年も前に『River Monsters』(英語版)のDVDをシーズン3まで購入し、鑑賞した。読了してはいないが書籍も所有している。「リバーモンスター」、直訳すれば「川の怪物」。自分が淡水魚にこだわる部分(連載第1回参照)とも番組の方向性は合致する。辺境の地では度々ニアミスし、現地ローカルから直接、撮影の裏話を聞いたこともある。正直なところ…怪しい噂が多かった。

僕が釣った“殺人魚”ムベンガ。2009年コンゴ民主共和国

わかりやすい例を挙げよう。番組で“殺人魚”として煽られる「ムベンガ」だが、僕は2009年の訪問時、現地でそのような情報を聞いたことはない。僕も現地人も、普通に川で水浴びをしていた。帰国後、おそらく僕と入れ違いに撮影され2010年に発売されたDVD(シーズン2)を見て、「場所が違えば人を襲うこともありうるのかな?」と不思議に思ったけれど…2016年に再訪した際、現地ローカルから「ディスカバリーチャンネルはあの辺で釣った」とかなり具体的に聞かされた。「…まぁ、外国人らしい演出だったんだな」と安心して、一緒に川で水浴びをした(笑)

南米大陸で最も恐れられる怪魚の1つ「デンキウナギ」。
最大900Vと言われる電撃は、人を死に至らしめることもあるとか。2014年ベネズエラ

自身の経験を振り返れば、撮影行はフィッシングガイドや通訳を雇い、ある程度予定調和な現地サービスを利用して行われることが多い。実際は何不自由のない大名釣行になっても、番組では冒険ドキュメンタリー風に演出・編集されるわけだが、『River Monsters』ほど時にエンターテイメントに徹するなら、むしろ清々しい。
番組(DVD)の中で、いくつか僕が嫉妬したシーンがある。その1つが簡易プールに水を貯め、生きたピラニアをいっぱい泳がせた中に出演者が入浴するシーンだ。ピラニアはそのイメージとは異なり、普段は人を襲ったりはしない。それを実証するためのシーンだったが、これは潤沢な装備を辺境に持ち込める、撮影行ならではの名演出と言えるだろう。
後年、自分が日本のテレビ番組とアマゾンに行くことになった際、「あの“ピラニヤ風呂”を超えるには、デンキウナギと泳ぐしかない!」と思い、プールを持って行こうと考えたが…デンキウナギと閉鎖環境で泳げば、本当に死にかねない。そもそもアイディアが後追いだし、何よりディレクターに「本当に死んだら放送できなくなるからダメ!」と言われ、諦めた。仮にピラニアでも、大怪我をした可能性はゼロではないが、その辺のおおらかさ、やりすぎ感が、日本の番組にはない魅力と言えるだろう。

日本テレビ系『アナザースカイ』で手にした「ドゥーカートゥットゥマー」。
海嘯で船が転覆しかけるなど、“演出”でなく本気で死にかけた。2017年パプアニューギニア

ちなみに『River Monsters』の日本編では、特別天然記念物(釣りはおろか触れることも禁止)のオオサンショウウオを捕まえるシーンがある。どのように許可を得たのかはわからないが、一般人である僕には事実上不可能な捕獲劇なので、羨ましく思った。

美しいものにはトゲがある!? アマゾンの淡水エイは、尻尾の付け根に毒針があり、
現地ではピラニヤ以上に危険な魚として、恐れられている。
「巨大魚」のみならず「危険魚」も含め、直感的な“モンスター”を追い求める趣向は共通する

僕は後追い目的でDVDや書籍を買ったのではない。むしろ逆で、後追いを避けるために購入した。2011年にインドに「グーンシュ」を釣りに行った時がいい例だ。
首都デリーへの航空券を手配した後に、急遽雑誌取材班が同行することになった。もともと単独行を予定し、『River Monsters』を確認して、被らないように別河川を開拓するつもりでいたのだが、同行スタッフに許されたインド滞在時間は5日間しかない。首都デリーから比較的近郊で、世界の大物釣り師の間では有名なラムガンガ川(ディスカバリーチャンネルでさらに有名になった)に向かうしか選択肢が無くなった。

ディスカバリーチャンネルが“撮影”され、よってスルーした淵。その際、自らも
現地ローカルから怪しい噂を聞いたが…後日釣友から伝え聞いた話とは細部が異なる

ラムガンガ川では「あの淵がディスカバリーチャンネルが“撮影”(後述)した場所だ」と現地ローカルが指差す淵を、あえて外した。正確にはその淵は釣り禁止で、撮影時には特別許可を得ていたのかもしれないが、いずれにせよそこから60km上流に自らの釣りの拠点を構えた。“いる”のと“釣れる”のは違う。世界広しといえど、川のポテンシャル(魚の生息密度)や、交通の便などの理由から、目指す釣り場は度々バッティングしてしまう。
視聴するほとんどの人は、実際に行くわけではないだろうから純粋に番組を楽しめばいい。一方実際に辺境に向かう釣り人、誰かの後追いなんてまっぴら御免という冒険家気質の旅人にとっては“未知の知”、何が知られていないかを知るための情報として、事前に観ておくのは悪くないと思う。

僕がルアーで釣った「グーンシュ」。番組では「人食いナマズ」や「悪魔の魚」と煽られるが、
僕が見聞きした限り、憎まれているというよりは、畏敬の念を抱かれていた印象。2011年インド

怪魚は人を狂わせるーーー。『River Monsters』の怪しい噂に関連して、自身もこんな経験をした。2008年、自分がブラジルで釣り上げたピラルクーについて、「“あのピラルクー”の写真は、漁師の魚と撮っただけ」と誹謗中傷をする日本人の一味現れた。その中心人物は、その少し前に「一緒に食事に行こう」と誘われ、単に面倒なので断った釣り具メーカーの人間だった。後々になって時期を振り返れば、僕モデルの釣り竿、“怪魚ロッド”でも作って一儲けしようと企画していたんだと思う。「現地ローカルに聞いてきた」とする嫉妬深い釣り人と、商魂たくましい釣り具メーカーが結託し、難癖つけてきた格好だ。当時、若かった自分は大いに怒り、同時に哀しんだが…その何年か後、外国の釣友から「ディスカバリーチャンネルのグーンシュは、漁師が釣った魚だ。そう現地ローカルに聞いた!」と聞かされた。僕は、自分がされた中傷とあまりに話が似ていて笑ってしまった。「むしろこうやって、後々まで語り継がれるのは、モンスターの勲章なのだな」とポジティブに考え直した。そして「きっとディスカバリーチャンネルも、きっと自分と同じ苦労をしてるんだろうな」と、勝手に心配した。

“あのピラルクー”。怪しい噂…後年尾びれ背びれがつくのは怪魚の勲章。2008年ブラジル

この事件にはさらにオチがある。僕のピラルクーに難癖つけてきた一味の1人が後年、僕に暴行を働き、前科までついた。一般の人からすれば、「たかが魚1匹を釣った釣らないで何故そんなことに」…と思うかもしれない。僕もそう思う。しかし、それが刑事事件にまで発展することもあるのが怪魚である。人を惹きつけるが故、そこには守銭奴も寄ってくる。ロマンと嫉妬渦巻く大物釣りの世界…そんな人間模様含め怪魚釣りの魅力だと、以後楽しむようになったが、渦中に居続けるのはいささか疲れたーーー。

4回ボウズで帰国し、5回目の渡航で釣り上げた、激レアのアジアアロワナ。
観賞魚として高額取引されるこの魚には現地マフィアも絡んでくる。2017年インドネシア

旅人は、同じ場所にとどまりはしない。大きさでも、数でもなく、種(魚種数)を求める…“多様性を釣り歩く”、そんな自分なりのアングル(連載第1回参照)を見出して以降の僕は、いつしか『River Monsters』の動向を気にすることもなくなった。テレビ番組からのオファーがひと段落した近年は、起業した釣り具会社の資金だけで、世界への旅を続けている。番組にはならない小さくも美しい魚、あまりにも確率が悪いダメ元のチャレンジ、釣り人にすら伝わりづらいマニアックな挑戦…そんな“視聴率”や“撮れ高”とは無縁の旅は、清貧で、ゆえに自由だ。

長い指のようなヒレが特徴的な異形の淡水魚、しかし小さすぎる「パントドン」。
最大で10cm満たない古代魚で、いわば世界最小のアロワナ。観賞魚としても人気。
しかしこんなエメラルドグリーンの光沢は、水槽では見たことがない。2019年ベナン

撮影行そのものを否定しているのではない。撮影には撮影なりの難しさがあることは、自分も体験済みだ。資金が潤沢だから楽勝、特別許可を得て保護区で釣りすれば簡単…などと単純な話ではないことも知っている。機材の量や充電設備の関係で奥地にまで到達できなかったり、スタッフの物音で魚が逃げたり、むしろ釣りの難易度が上がるケースも多い。ディスカバリーチャンネルには、撮影行ゆえの制約の中で、それでも撮影行だからこその、スケールの大きな番組作りを期待したい。

南米大陸を代表する怪魚「ピライーバ」。TBS系『情熱大陸』撮影行にて。2013年スリナム

…というわけで、これまで生き物や、自然に興味がなかった人々にとっても『River Monsters』はおもしろ可笑しく楽しめる番組だろう。これをキッカケに、水中という、僕らの世界と並存するパラレルワールドに興味を深めてみてはいかがだろうか?

小塚拓矢

人よんで“怪魚ハンター”。(株)モンスターキス代表。学生時代から世界の辺境への釣り旅を続け「情熱大陸」「アナザースカイ」等のドキュメンタリー番組に出演。近著に「怪魚ハンター」(山と渓谷社)、「怪魚を釣る」(集英社インターナショナル)、「怪魚大全」(扶桑社)がある。

パーソナルブログ:Blog MONSTER KISS

(2019/05/16)
 

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