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怪魚ハンター小塚拓矢 連載 第2回 日本編(全3回)

Discovery Channel - 5月9日(木)

「身近に釣れる怪魚はいますか?」…時々そんな質問をいただくけれど、答えに困ってしまう。非日常と多様性…連載第1回で語った、僕なりの怪魚の魅力。日本にいないからこそ旅するロマンがあり、安全で、簡単に、誰にでも…そんなインスタントな存在でないからこそ、怪魚なのだから。

ヒグマの恐怖に怯えつつ、藪を漕ぎ進んで手にした「イトウ」。2008年北海道

「怪魚ってどんな魚ですか?」という質問も多い。むしろ、そんな質問をきっかけに「怪魚とは何か?」をじっくり考えるようになった。定義がない、文字どおり“怪しい魚”であり、人それぞれでいいと思うのだけれど…一応僕は「1mまたは10kg以上に成長する淡水魚」をイメージして“怪魚”という言葉を使っている。

闇夜にロマンを追い求めた「アカメ」。2010年高知

補足すると、僕がいう“怪魚”は、人間の手が介在せず有史以前からそこに存在する魚(在来種)を指している。釣り堀など、人間が育てた魚は含めない。でなければ極論、水族館で釣りをすることも“怪魚釣り”になってしまうからだ。近年話題の、“お堀のアリゲーターガー”など、闇放流された魚を狙う釣りも、個人的には“怪魚釣り”には含めていない。そこに旅するロマンや冒険性を見出せないからである。

日本固有種、かつ生涯を淡水域で完結する意味で、日本の怪魚オブ怪魚「ビワコオオナマズ」。2018年滋賀

そんな僕なりの基準「1mまたは10kg以上に成長する在来種の淡水魚」に当てはまる“怪魚”は、日本にも何種か生息する。北海道の「イトウ」、高知の「アカメ」、琵琶湖水系の「ビワコオオナマズ」、その3種が代表だろう。高校時代、それらを“日本三大怪魚”と呼んでピックアップし、大学時代の国内釣行の目標に定めた。それらはいつしかオオウナギを加え、“怪魚四天王”にアップグレードした。

太平洋に面した熱帯域に広く分布する「オオウナギ」。2007年沖縄

“日本怪魚四天王”制覇…目標を達成した現在、国内での怪魚釣りは、事実上やめてしまった。生態系の頂点で、必然的に個体数が少ない巨大魚を追い続けることに、疑問を感じるようになったから。この時代、自分のようにメディアに出る人間は、なおさら配慮する必要があるとも思った。なにより、もっと大きく、もっと多く…と釣り続けても、(どんなに小さくとも)初めての1匹の感動には及ばないからである。

ビワコオオナマズの産卵。オスがメスに体を巻きつける。
近年は、釣らずとも、ソッと観察するだけで楽しい。2018年滋賀

“初めて”だけは超えられない。だから僕は、もっと遠く、初めての1匹を求め世界を目指した。日本の怪魚は、それはそれで素晴らしいが、だからこそソッとしておいてあげたい。いつしか「かわいそう」という感情が芽生えていた。これから挑戦する若者のためにも、わざわざ僕が更なるプレッシャーを与える必要はないとも思った。世界には近種(同属)で、より巨大化するモンスターがいるのだから。

かつて文豪・開高健も旅した川で手にした「タイメン」。2006年モンゴル

どうせなら1番デカい魚種を目指そう。1番に憧れるのは、男の本能だ。僕は、イトウ属(Hucho属)の最大種「タイメン」をモンゴルの草原に、アカメ属(Lates属)の最大種「ナイルパーチ」をケニアの砂漠に、ナマズ属(Silurus属)の最大種「ウェルズ」をカザフスタンの荒野に追いかけた。

アフリカ大陸を代表する怪魚「ナイルパーチ」。2013年ケニア

後日談になるけれど、カザフスタンで手にした「ウェルズ」は、実は外来種(移入種)だと知った。そして、それを指摘してくれた友人の誘いで、彼の故郷チェコへと向かった。

ユーラシア大陸を代表する怪魚「ウェルズ」。2016年チェコ
Photo by Toshinori Mochizuki

さて。近年、日本でも淡水巨大魚釣りを再開した。狙うは、“中国四大家魚”とも呼ばれる、草食・雑食性の巨大魚たちである。筆頭は、利根川水系の「アオウオ」だろう。近年でも170cmを超える個体が釣り上げられており、現在、日本に生息する淡水魚では最大の魚種だと思われる。その他、「ソウギョ」や「ハクレン」など、ユーラシア大陸出身の巨大魚たちが、最近の僕を熱くする。彼らは戦時中、食糧難を理由に国策として日本に連れてこられた移入種だが、平和なこの時代、海に囲まれ(比較的)淡水魚を食べない日本という新天地で、もしかすると故郷以上の平和を甘受しているかもしれない。

中国原産の巨大魚「アオウオ」。貝類を好み、餌にはタニシを使った。2017年/利根川

“怪魚”とは1mまたは10kg以上に成長する淡水魚だとする自分なりの定義、その補足事項に「在来魚であること」があることは、先に述べた。既にカザフスタンで手にしていた「ウェルズ」を、わざわざチェコに求めたのもそういう理由だ。アリゲーターガーはアメリカで釣ってこそ“怪魚”だと思う(連載第1回参照)。
その意味で日本にいる“中国四大家魚”が、果たして“怪魚”かは自分の中では難しい問題だが…「身近に釣れる怪魚はいますか?」という質問の答えには、彼らをオススメしている。利根川水系では世代交代を重ねて野生化し、都心(東京)から日帰りで釣れる。ソウギョに関しては、関西圏でも確認できる。元々いなかった魚であり、「かわいそう」といった心理的なハードルも低い。

草を食べることからついた名前は「ソウギョ」。パンでも釣れた。2016年/江戸川

彼らはアカメやイトウ、ビワコオオナマズのような獰猛な肉食性(魚食性)ではなく、プランクトンや、草、貝など、逃げないエサをコツコツと食べ続ける。魚類最大のジンベイザメがプランクトン食であるのがいい例だろう、目の前の食べやすいエサを安定的に捕食し続ける魚には、むしろより一層巨大化する種がいるのだ。

プランクトン食で、いわば川のジンベイザメ「ハクレン」。マッシュポテトを餌に。
釣り方を間違わなければ、単日釣行でもほぼ確実に釣れる。2018年/荒川

そんな草食・雑食性の巨大魚たちは、概して目の前にエサが通れば食いつくような、愚直な肉食魚たちとは違う。より慎重で、堅実な印象だ。故に、釣りにも繊細さ(道具の精錬)やウデ(技の練磨)が求められて、難しい。その難しさが、僕を熱くさせる。もっと深く…“怪魚釣り”を一周した僕が、旅のロマンや冒険性とは別に、釣りそのものの愉しみを掘り下げたところに、彼らは存在する。

「アオウオ」のふてぶてしい表情。最初の1匹までに足掛け7年かかった。
こんな人間より大きくなる怪物が関東平野の河川にいるのだ。

日帰り釣行でも狙えるとはいえ、釣竿を引きしぼるのは1mを超えてくる巨大魚達だ。理屈抜きに、本能が喜ぶ。日常の中の非日常が、そこにある。“怪魚”の向こう側・・・幸せの青い魚は、身近にいるのかもしれない。

(つづく)

小塚拓矢

人よんで“怪魚ハンター”。(株)モンスターキス代表。学生時代から世界の辺境への釣り旅を続け「情熱大陸」「アナザースカイ」等のドキュメンタリー番組に出演。近著に「怪魚ハンター」(山と渓谷社)、「怪魚を釣る」(集英社インターナショナル)、「怪魚大全」(扶桑社)がある。

パーソナルブログ:Blog MONSTER KISS

(2019/05/09)
 

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