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『家へ帰ろう』パブロ・ソラルス監督インタビュー

MOVIE Collection[ムビコレ] - 12月14日(金)

『家へ帰ろう』パブロ・ソラルス監督インタビュー
主人公とは違い、祖父は死ぬまで苦悩を語ってくれなかった

『家へ帰ろう』
2018年12月22日より全国順次公開
(C) 2016 HERNÁNDEZ y FERNÁNDEZ Producciones cinematograficas S.L., TORNASOL FILMS, S.A RESCATE PRODUCCIONES A.I.E., ZAMPA AUDIOVISUAL, S.L., HADDOCK FILMS, PATAGONIK FILM GROUP S.A

第2次世界大戦中、ホロコーストから辛くも逃れた生き延びた88歳の老人。彼が、命の恩人との約束を果たすためにブエノスアイレスからポーランドへと向かう旅路を描いたロードムービー『家へ帰ろう』。

様々な人々の善意に触れてかたくなだった心をほぐしていく一方、70年の時を超えて壮絶な過去と向き合う主人公……。自身の祖父の物語をもとに本作を作ったというアルゼンチン人監督、パブロ・ソラルスに、映画に込めた思いについて聞いた。


──本作は、監督自身のおじいさまのエピソードをもとにしていると聞きました。

撮影中のパブロ・ソラルス監督

監督:私の祖父はポーランドで生まれ、6歳の時にアルゼンチンに移住し、祖父の父の後を継いでアルゼンチンでも仕立屋をしていました。私が、5、6歳の時、祖父はポーランド人だと聞いたのですが、なぜか家庭では一切その話題にならない。ある時、私は、祖父の家で食事をしている時にふと「ポーランド人なの?」と聞いたのです。すごく緊迫した空気が流れ、沈黙が続き、祖父に睨まれました。その空気は、今でも覚えています。悪いことをしたような罪悪感にかられながら、祖父の前では「ポーランド」と言ってはいけないのだと理解しました。
 本作を作るにあたり、どこからインスピレーションを得たのかと問われれば、このように答えています。一言でいうと、「沈黙」です。
「ポーランド」という言葉をなぜ祖父が聞きたくなかったのか、理由を知ることができない期間が長く続いた。「沈黙」が続いたんです。祖父は苦悩を語らず、両親は祖父の苦悩をあまり知らなかったので、誰も私に語ってくれる人はいなかった。祖父はそのことを一言も話さず、残念ながら90年代に死去しました。23〜25歳の時に、私が演劇から映画に方向転換したのを、祖父はすごく喜んでくれました。祖父はずっと映画が好きで、僕を応援してくれていたので、本当はぜひ、この作品を見てほしかった。
 10代になるとポーランドという国や文化に対して少しずつ興味が出てきて自分で調べるようになり、祖父とは違う視点で見られるようになってきました。祖父にとってポーランドはただ苦痛な場所だったのかもしれません。祖父のポーランド観には、理解できても共感はできない部分もありました。でも、私は知識を深めていくうちに、祖父とは違って、ポーランドという国を身近に感じるようになっていきました。

──結局、ご家族が、おじいさまから直接ポーランドの話を聞く機会はなかったんですね。

監督:ありませんでした。両親も、祖父母がポーランドでどんな生活をしてきたのか知りません。興味がなかったというのもありますが、祖父の苦悩、苦痛は怒りを生み出し、怒りを感じると苦悩、苦痛を隠そうとするという悪循環で、家族の中で話題に挙がることがなかったからです。戦争体験を乗り越えるには、痛みを切り離し、忘れなければ生きていけません。子どもに聞かせるには悲しい話ですし。だから劇中、アブラハムが自分のストーリーを誰かに伝えるに至ったのは、とても大切なことだと思っています。
 父方の祖父は亡くなりましたが、ポーランド人ではないけれどユダヤ人である母方の祖父は95歳で健在です。「ドイツの地を踏みたくない」というアブラハムのエピソードは彼の言葉をヒントにしています。彼は、この映画の公開日に見に行ってくれました。それからは毎週日曜日に劇場へ足を運び、劇場の方やロビーに出てきた観客に、「これは僕の孫の作品なんだ」と自慢気に話していたようです(笑)。「もしドイツでこの作品が公開されるなら、ぜひドイツに行って見たい」とも言ってくれました。

──父方、母方、両方のおじいさまがインスピレーションを与えてくれたのですね?

パブロ・ソラルス監督

監督:父もモデルになっています。90年代、僕がメキシコで演劇の仕事をしている時に、訪ねてきた父と皆でメキシコ屈指のアートの町、サン・ミゲル・デ・アジェンデに行ったんです。父はホテルのスタッフに、「来年の夏、40人のツアーを連れてくるからディスカウントしてくれ」と値切りました。本当に父は旅行業を営んでいました。アブラハムがスペインのホテルで同じ行動を取るシーンは、それをヒントにしています。  家族総動員というのがそこがユダヤ人っぽいところですね。

(2018/12/14)
 
パブロ・ソラルス
Pablo Solarz

1969年12月9日生まれ。ブエノスアイレスの演劇学校を卒業後、舞台俳優に。舞台演出も手がけた後、アメリカで映画作りを学び脚本家として活躍後、05年に短編映画『El Loro』(未)で監督デビュー。2011年に長編初監督作品『Juntos para Siempre』(未)を発表。本作は長編2本目となる。

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