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自分探しの秘訣は、おいしいものをお腹いっぱい食べること — 新鋭ふくだももこ監督が描く『おいしい家族』

BANGER!!! - 9月20日(金) 11時30分

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『おいしい家族』©2019「おいしい家族」製作委員会

おいしさ満載、食べれば食べるほど「元気」が溢れ出す!

「この映画では、私の思うユートピアを描きました。
 世界に必要なのは、自分を大切にして、人に優しくすることだけです。」

映画『おいしい家族』のプレス資料には、ふくだももこ監督のこんな直筆メッセージが添えられている。映画には、こんな家族がいても、こんな愛の形があっても良いのではないかという、監督の願いが込められている。

『おいしい家族』©2019「おいしい家族」製作委員会

荒削りな面も多々あるのだが、『おいしい家族』は不思議な魅力に満ちて、「元気」が出てくる映画だ。一番の要因は、登場する家族の誰もが、それぞれの味わい方で盛り沢山のおかずとご飯、甘いおはぎ、新鮮な伊勢エビなどを食べるシーンが満載なこと。映画に息づく人たちを、より活き活きとさせる一番の秘訣は、思いっきり食べて元気にさせるってことだと改めて実感した。食べれば食べるほどに、キャラクターたちがアグレッシヴに動き出す。『おいしい家族』は、そのタイトルの通り、おいしさ満載の映画なのだ。

でも、人生って良いことばかりぢゃないってことは誰もが認めるところ。主人公の橙花だって例外ぢゃない。

お父さんがスカートにエプロンで料理してるって、マジ!?

小さな島で生まれた橙花(松本穂香)は、実家を離れ東京で美容部員として働いている。子どもの頃、母に塗ってもらった口紅で唇が魔法のように輝いた思い出を、今も大切に胸に秘めているからだ。でも、この日も接客がうまくいかない。仕事が終わり結婚三周年の食事に向かった彼女は、赤ワインに肉をオーダーする。別居中の夫は白ワインに魚を注文し、今夜も波長が合わない。これじゃ結婚生活が続くわけもない。ぎこちない毎日が続く中、母の三回忌で久し振りに実家に帰ることになる。

『おいしい家族』©2019「おいしい家族」製作委員会

島の船着き場では元気満タンの弟・翠(笠松将)が、姉にしか分からないクラクションでメロディを鳴らす(※僕には全く分からなかった)。実家に着くと、スリランカから来た義妹のお腹には第一子が健やかに眠っている(お腹の中なのでもちろん見えない)。そして台所では、父が母のスカートにエプロンをして料理をしている。

『おいしい家族』©2019「おいしい家族」製作委員会

え、え、えっ……、ちょっと待って。お母さんのスカートにエプロンまとって料理なんて、どういうことなの? それどころか、夕食ではマウンテンデューのTシャツを着た変なおじさん和夫(浜野謙太)と娘のダリア(モトーラ瀬理奈)が食卓を囲む。こいつら、いつの間に家族同然のように振る舞ってんの(怒!)。一体全体、ウチの家族はどうなってんの! ただでさえテンション低めの橙花は、目の前が真っ暗になり茫然自失、実家には自分の居場所はないとばかりに家を飛び出してしまう……。

『おいしい家族』©2019「おいしい家族」製作委員会

ユートピアって本当にあるのだろうか。ほんの少しの思いやりって、どうしたら心に育てられるのだろうか。人に言えないことがたくさんあって、いつかやりたいなぁって考えていたことも、結局できないままに過ごしてしまっている今の自分って、やっぱりイケていないと思う。でも、いつも流されてしまう。そんな時、これと決めたことをやってのける人が現れた。それは紛れもなく、母のスカートにエプロンをまとったお父さんだ。地元の学校の校長である父は、毎朝スカートを着て生徒たちを迎える。そして、いきなり「結婚する」と宣言する。相手はなんと、マウンテンデューのTシャツがやたらと似合う居候の和夫。いやはやこの物語、一体どんな展開を見せていくんだ!

『おいしい家族』©2019「おいしい家族」製作委員会

満腹だけど、もう少しなら食べられる。

『おいしい家族』は、ふくだももこ監督自身の短編『父の結婚』(2016年)を基にした長編第一作。ふくれっ面が続く橙花には、朝ドラ「ひよっこ」で全国区になった松本穂香。妻のスカートを身にまとって登場し、全編女装の父親役の板尾創路が、終始ブレることのない演技で共演者たちを牽引する。ミュージシャンと俳優の二足わらじの浜野謙太、何事も肯定的に受け止める弟を演じた笠松将、モデル出身のモトーラ瀬理奈ら、家族には個性的な顔が並ぶ。また、ヤケ酒をあおる橙花に伊勢エビの活け造りを差し入れるエビオ役の栁俊太郎、個人的な悩みを抱えるダリアの親友、瀧を演じた三河悠冴も忘れがたい。若き情熱に共鳴し、ライヴ感を重視した本多俊之による劇伴も軽快だ。

『おいしい家族』©2019「おいしい家族」製作委員会

ふくだ監督は、食卓を囲むシーンに特別な思い入れを託している。素朴だけれどシズル感満載の料理を俯瞰し、がむしゃらに食べる描写を重ねていく。また、家族たちのやりとりではカメラを据え、役柄に同化した俳優たちの自然体の演技を引き出そうとしている。また、同じシーンやフレーズを異なる語り口で反復させて「差違」を浮かびあがらせる、映画ならではのモーメントが埋め込まれている。

『おいしい家族』©2019「おいしい家族」製作委員会

映画の後半、余計なことをしゃべらない父が、「なぜ、お母さんのスカートを着ることにしたのか」を橙花に向かってポツリと漏らす場面がある。その時、父と娘の姿を見つめながら、満腹だけれどもう少しなら食べられるという気分に満たされ、無性に元気が湧いてきた。

『夜明け』(2018年)の広瀬奈々子監督、『暁闇』(2018年)の阿部はりか監督、そして『おいしい家族』のふくだももこ監督と、2019年は映画に誠実に向き合う「元気印」の若き女性監督たちの活躍の年になった。彼女たちの「これから」が楽しみだ。

文:高橋直樹

『おいしい家族』は2019年9月20日(金)より全国ロードショー

 

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