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エンタメに生きる500系 速さ捨てた「最速」新幹線

朝日新聞デジタル - 5月16日(水) 12時4分

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(朝日新聞デジタル)

 人気アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の世界観をテーマにしたJR西日本の山陽新幹線「500 TYPE EVA」が13日に運行を終え、夏にはハローキティをあしらった新幹線としてお目見えする。ベースの車両はもともと、JR西日本が世界最速をめざして独自に開発した500系。紆余(うよ)曲折をへて、「速さ」から「楽しさ」にその使命をかえて活躍している。
■「世界最速」一躍脚光
 500系は1997年3月、山陽新幹線でデビューした。当時の世界最速タイとなる時速300キロを営業運転で達成し、新大阪―博多の所要時間を2時間17分に短縮。山陽区間での平均速度はギネス世界記録にもなり、一躍脚光を浴びた。
 500系の使命は「世界最速」だった。87年の国鉄分割民営化の後、JR西は山陽区間で飛行機に乗客を奪われ、苦しい立場となったからだ。「高速化で、飛行機から乗客を取り戻すことが大きなテーマとされた」と開発に携わった元JR西社員の仲津英治さん(73)=大津市=は振り返る。
 山陽新幹線が全通した75年当時の最速は時速210キロ。新大阪―博多の所要時間は3時間44分だった。89年には最速230キロの「グランドひかり」が登場し、所要時間を2時間49分に縮めた。500系はそれを大きく上回る速度を達成し、「対航空機の切り札」と位置づけられた。
■長い鼻の理由は…
 500系が人気なのは、その特徴的な外観にある。前頭部の形状は戦闘機のような約15メートルのロングノーズ。「超高速走行でも空気の壁をスムーズに突き破るデザイン」(JR西)だ。
 この形状は、当初の試験電車「WIN350」とは似ても似つかないものになった。変形した背景には、開発時に立ちはだかった「騒音問題」があった。
 列車が高速でトンネルに入ると、圧縮された空気の波がトンネルの出口側で大きな爆音を生む。山陽新幹線は全線に占めるトンネルの割合が50%を超えた。さらに試験走行は真夜中。「赤ちゃんが起きて泣き出すとか、窓ガラスが響いてしょうがないとか、苦情が来て仕方がなかった」(仲津さん)という。
 そんな問題を解決したのが「自然の造形」だ。
 野鳥の会の会員でもあった仲津さん。目をつけたのが、空中から水中へ目にもとまらぬはやさで飛び込んでエサを捕るカワセミだ。実験をすると、カワセミの細長いくちばしの形状が水中に入る際の抵抗を減らすことがわかった。500系のロングノーズの誕生だ。
 500系はほかにも、自然の造形を採り入れている。試験走行では、パンタグラフが風を切る音も大きな問題だった。そこで、最も静かに飛ぶ鳥だとされるフクロウに着目。大阪市の天王寺動物園からはくせいを借りてフクロウの羽を研究した。空気抵抗を減らす突起の存在を突きとめ、パンタグラフに応用した。
 「空力性能の向上、低騒音化、それらを象徴する美しさの統合の結論」。JR西は500系の造形を当時こう表現した。
■絶頂期終え、今は「こだま」
 1997年3月に山陽新幹線で登場後、500系は同年11月には1日3往復の「のぞみ」として東海道新幹線へ乗り入れを果たした。東京―博多の所要時間を4時間49分に縮め、初めて5時間の壁を破った。9編成となった98年10月のダイヤ改定では、東京―博多を1日7往復するまでになった。
 しかし、それが絶頂期だった。ほどなくしてJR西とJR東海が共同開発した700系、さらにはN700系が登場するや、東海道区間を走る500系の本数はしだいに減っていった。ついに2010年2月、のぞみとしての運行を終えた。
 東海道区間での13年間という運行期間は0系、100系、300系の歴代車両と比べても最短だった。
 500系は現在、最高速度を285キロに落とし、山陽新幹線の「こだま」として運行中だ。16両編成から8両編成へとかわり、使われなくなった車両は廃車となっている。
■エヴァの次はキティ
 「世界最速」をめざしてきた500系はいまや、「速さ」から「乗ることを楽しむ」車両へとその使命をかえている。
 2012年10月14日の「鉄道の日」に、500系をモチーフにした山陽新幹線の公式キャラクター「カンセンジャー」が誕生。車体に絵などをあしらった「ラッピング車両」も登場した。14年には車内で鉄道おもちゃ「プラレール」で遊べる「プラレールカー」もでき、子ども向けの運転台も設置された。
 さらに15年には、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」をイメージした車両の運行が始まった。山陽新幹線の全線開業40周年とエヴァの放映20周年を記念した企画だった。昨春までの運行期限が1年ほど延長されるほどの人気ぶりだった。
 エヴァ新幹線の終了後、今夏にはハローキティをあしらった「ハローキティ新幹線」がお目見えする。乗る人だけでなく、走る姿をみる人をもワクワクさせる500系。新たな物語をつむぎ始めている。

 

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