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長野県が職員11人に損害賠償請求へ 異例の方針に知事「断腸の思い」

THE PAGE - 9月13日(水) 20時22分

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(THE PAGE)

 長野県内の森林組合の補助金不正受給をめぐり、担当の県職員にも責任があったとする県が関係職員11人に8000万円余を上限として損害賠償請求する方針を固め12日、阿部知事が会見で明らかにしました。これまでに弁護士などによる検討委員会が県職員への損害賠償請求が可能と判断したのを受け、この日、県監査委員に監査請求をしました。自治体が職員に損害賠償を求めるのは極めて異例。多数が賠償請求を是とする県内世論の一方、職員の士気にかかわるとの指摘や反発もあり、問題は尾を引きそうです。

森林組合が補助金を不正受給

 国や県の補助金を不正に受給していたのは同県大町市の大北(だいほく)森林組合。県によると10年ほど前から数年間にわたり、ほぼ未施工の森林作業道の工事336件で4億7000万円余の補助金を得ていたほか、間伐などで実施時期が適合しないなどの例が多数に上りました。

 県が公表している調査結果によると不正受給額は国、県分を含め16億円余で、このうち時効の分を除く約9億6500万円について、県は同森林組合に返還を請求。同組合は県の指導で長期にわたる返済計画を進めています。

 国の補助金返還命令が出たため長野県は昨年9月、11億3600万円を国庫に返還。不適切な事務処理への制裁として、国は「加算金」3億5300万円を長野県に課しました。

 2015年には長野県は、偽って国の補助金の交付を受けたとして補助金適正化法違反で同組合と元役員を告発。今年3月、組合役員に懲役5年の実刑、組合に罰金の判決が出ています。

 一連の経過の中で不正な補助金申請に対し、関係の県職員が適切にチェックしなかったり補助事業の現場の確認を怠るなど、ずさんな対応があったのではないかとの指摘や、なれ合いと見られる事務処理はなかったのかといった疑問が関係者や県民から噴出。住民監査請求を受けた県監査委員が今年2月、県に対し「国への加算金納付による損害の県職員への賠償請求について9月12日までに検討し、賠償責任が認められる職員について厳正に対処するよう」勧告しました。

 これを受け県は弁護士らによる「法的課題検討委員会」を設置。委員会は8月、国から課せられた加算金3億5300万円の県の持ち出し負担に関連して、補助金不正申請に関係した出先機関の課長や係長、担当職員11人に合わせて最大1億5300万円を損害賠償請求できるとの判断を示しました。

「士気に関わる」慎重論も

 会見で阿部知事と県側は、11人の県職員のうち不備な申請などを見逃した重大な過失があったとして課長、係長ら4人に合わせて1100万円、他の職員7人に合わせて7200万円、森林組合の元役員に約8400万円、森林組合に約600万円の損害賠償を請求する方針を公表。

 また、時効で組合に返還請求できなかった国への返還分約1億2600万円については検討委員会の判断に沿って森林組合の元役員に約4600万円、組合に約6100万円を請求する方針を示しました。

 阿部知事は「県職員のトップであるとともに県民の代表でもある立場でこのような判断をしなければならないのは断腸の思い。熟慮を重ねて判断した。法的課題検討委員会からは請求の範囲について報告をいただき、しっかり検討して今回取りまとめた。県民の理解が得られるよう対応していきたい」と述べ、知事が月額10%を3か月、副知事2人は同2か月の減給とする処分の条例案を9月県議会に提案する考えを示しました。

 県は地方自治法で、県費の支出に関わる「財務会計職員」が故意または重大な過失により県に損害を与えた場合はその損害を賠償しなければならない――としている規定に損害賠償請求の根拠を置いています。また、財務会計職員以外で不正請求に関与した職員は民法の規定によって賠償の責任が判断されるとしています。

 これについて県内では県民の多くが賠償請求を支持するとの世論調査の結果がある一方、職員への賠償請求は士気にも関わるから慎重にすべきだとの主張や、「これでは安心して働けない」との反発もあり、監査の結果を受けて県が賠償請求を行う段階であらためて論議を呼びそうです。

 現在2期目の阿部知事は、長野県世論調査協会の8月の調査でも85%の高い支持率を示しています。その一方で「安定県政」が行政の現場で緊張感を欠いた判断やなれ合いの雰囲気を広げていないかとの懸念も生じています。補助金の巨額不正受給が長い間放置されていたこと自体、本来厳正であるべき行政の緩みを象徴しており、県政の引き締めをどう図るかが今後問われてきます。
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■高越良一(たかごし・りょういち) 信濃毎日新聞記者・編集者、長野市民新聞編集者からライター。この間2年地元TVでニュース解説

 

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