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写真で旅する沖ノ島 “神宿る島”と関連遺産群の世界遺産登録が意味すること

THE PAGE - 7月17日(月) 13時10分

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(THE PAGE)

 福岡県の玄界灘上に浮かぶ「沖ノ島」。周囲わずか4キロメートルの島に、この夏、世界が熱い眼差しを注いだ。

 7月2日〜12日にかけてポーランドのクラクフで開催された第41回世界遺産委員会で、この小さな島とその関連遺産群が、ユネスコの世界文化遺産登録が決定した。今年5月にはユネスコの諮問機関が一部の史跡などを除外する勧告をし、長年世界遺産登録に向けて取り組んできた地元には一時、落胆ムードが漂った。

 世界遺産登録がもたらす経済効果だけの問題ではなかった。勧告の内容では、沖ノ島に鎮座する宗像大社沖津宮の祭神・田心姫神と、姉妹神である湍津姫神を祀る中津宮、市杵島姫神を祀る辺津宮とが分断されてしまい、有史以来続く、先進国の中でも希有な日本の信仰の形が認められないことになる。

 しかし、今回の決定はこの勧告を覆すものとなった。申請した全ての遺産が「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」として認定された形なのだ。

むやみに人が立ち入ることを拒み続ける神の島、「沖ノ島」

 沖ノ島は中国や朝鮮半島との外交上、当時の日本にとって重要な海上要衝であり、異国との境界に横たわって国家安寧と渡航安全の祈りが捧げられた島だ。縄文時代以降は人が住んだ形跡はなく、国家による祭祀が行われるようになった4世紀後半以降は「神宿る島」として神聖視されてきた。
 これまでの調査で、祭祀の際に使われた祭器具や、神に奉納された当時最高峰の宝物など約8万点の遺物が島から採集されている。金製指輪、金銅製龍頭、奈良三彩といった宝物は、国家の威信をかけて集められたものばかりだ。沖ノ島が「海の正倉院」との異名をもつ由縁だ。

 この島で国家祭祀が行われたのは日本が表向きの外交を絶つ9世紀まで。しかしその後も、沖ノ島は尊い神の坐す島として崇敬され続け、現在に至っている。
 今なお沖ノ島はむやみに人が立ち入ることを拒み続ける神の島だ。渡島には宗像大社の許可が必要な上、一糸まとわぬ姿で海中に潜って毛の先まで清まってから初めて上陸が許される。島からは一草一木一石たりとも持ち出すことが禁じられ、また、女人禁制であるため、女性は中津宮の鎮座する大島で沖ノ島を遥拝するしきたりだ。

 沖ノ島と周辺遺産が世界遺産に登録されたことは、こうした古来の信仰のあり方が世界に認められたことに他ならない。一方で、世界的に関心を集めるようになった今は、より一層の「守り」が求められている。

神の島の静寂を守り続けるため写真展

 写真家にして作家の藤原新也さんは 2012年以降、3度にわたり宗像大社の特別な許しを得て沖ノ島に上陸。絶海の荒波からはじまり、岩上祭祀が行われた巨石群や手つかずの森などをレンズに納めた。島の景色はただの景色ではない。藤原さんが古代の人々に抱いた畏敬の念が写し出す信仰の原風景だ。

 今年5月に決行された3度目の上陸の際には、島内でも立ち入りがさらに厳しく制限されている場所での撮影が許可された。藤原さんは語る。

 「今回の展示会では、禁足の森を高精細カメラで撮影した12メートルのパノラマ写真を展示します。あたかも実際の禁足の森を目の前にしているかのようなリアリティーが感じられると思います」

 19日から始まる写真展「沖ノ島 神宿る海の正倉院」(東京・日本橋高島屋)では、これまで守られてきた有形(島)と無形(心)の神の宝を、直接足を踏み入れずとも感じられる特別な展示会だ。
 現在は宗像大社の「神宝館」に収蔵されている沖ノ島のご神宝の数々も見所のひとつだ。写真でありながら生々しく、見る人に訴えかけてくる。藤原さんの手により長い眠りから覚め、ひっそりと、しかし確かに息づく宝物には、古代の人々の切実な想いが沁み込んでいるのがわかる。写真を通して信仰を目の当たりにできる、貴重な機会だ。

 足を踏み入れることができないからこそ、意味がある。写真を通して遥拝することで、神の島の静寂を守り続けたいと願うばかりだ。

■「沖ノ島 神宿る海の正倉院」展 撮影/藤原新也
【期間】7月19日(水)〜8月1日(火)【会場】日本橋高島屋8Fホール
【入場時間】午前10時30分〜午後7時【料金】大人800円

 

 

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