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トランプ大統領の機密漏えい疑惑 情報が第三国に? 頭の痛いイスラエル

THE PAGE - 5月19日(金) 19時0分

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(THE PAGE)

 アメリカの複数メディアは15日、ロシアのラブロフ外相とホワイトハウスで10日に会談したトランプ大統領が、機密性の高い情報をロシア側に伝えていたと報道。この直後からティラーソン国務長官やマクマスター大統領補佐官は「誤報である」と報道を強く否定した。トランプ大統領の側近が「火消し」に奔走していたにもかかわらず、大統領自身は翌日のツイートで「大統領としてロシア側とテロに関する事実を共有しておきたかった。私にはそれを行うための絶対的な権限がある」と、ロシア側に情報を伝えたことを示唆している。同盟国から提供された機密性の高い情報を、その国の了承を得ずに微妙な関係にあるロシアに提供したことで、アメリカと同盟国との間にすきま風が吹く危険性を指摘する声もある。

ロ外相との会談写真で出し抜かれる?

 ロシアのラブロフ外相がホワイトハウスを最後に訪れたのは4年前。2013年の8月だ。翌年にウクライナで政変が発生し、親ロシア派として知られたヤヌコビッチ政権が崩壊すると、クリミア半島では親ロシア派によるデモが連日行われ、ロシアから国境を越えて多くの武装勢力がクリミア半島に侵入した(ロシアは軍の関与を否定しているが、武装勢力の多くがロシア軍関係者であったという説は現在も根強く残る)。その後、ロシアも自国民の保護を名目にクリミアに対して軍事行動を開始。3月18日にはクリミア半島全域がロシアに編入された。これによって、欧米各国とロシアとの関係が悪化。ラブロフ外相がクリミア危機後にホワイトハウスを訪れることはなかった。

 先月12日、ティラーソン米国務長官はロシアを訪れ、モスクワでラブロフ外相、そしてプーチン大統領と会談を行った。4月6日に米軍がシリアの空軍基地を巡航ミサイルで攻撃していたこともあり、ラブロフ外相はアメリカの軍事行動を違法として、新たな攻撃を行わないよう要請している。トランプ政権の閣僚として初めてロシアを訪れたティラーソン長官は「米露関係の改善を期待する」としか語ることができず、関係悪化が垣間見える結果となった。しかし、この会談後にラブロフ外相の約4年ぶりとなるホワイトハウス訪問が決定している。

 前述したように、ラブロフ外相のホワイトハウス訪問は決して珍しい話ではない。しかし、今回は訪問の前後に、通常では考えられないような出来事がいくつも発生した。訪問の前日には、昨年の米大統領選でロシアの選挙戦への介入やトランプ陣営とロシア政府との繋がりを捜査しているFBIのコミー長官が、出張先のカリフォルニア州で突如解任を告げられている。会談前後のメディアによる写真撮影は認められなかったが、ラブロフ外相の「専属フォトグラファー」は会談への同席を許可され、会談中も写真を撮影していた。会談でトランプ大統領やラブロフ外相が談笑したり、リラックスした雰囲気の中で固い握手を交わす様子をとらえた写真は、会談後すぐに世界中に発信された。

 ラブロフ外相の専属フォトグラファーは、国営イタルタス通信に勤務しており、親密な雰囲気で行われた会談の様子がロシア側から世界に紹介されたのだ。ホワイトハウス側は写真が通信社によって使われるとは知らされておらず、CNNは12日に「やつらに騙された」と憤慨するホワイトハウス高官のコメントを紹介している。しかし「騙された」と憤慨したのは、アメリカ側だけではなかったようだ。

無断で情報提供なら同盟国との信頼関係に影

 15日にワシントンポストやニューヨークタイムズは「会談ではトランプ大統領からラブロフ外相に機密情報が提供された」とする複数のホワイトハウス関係者からの情報を紹介し、ロシア側に提供された情報が第三国からアメリカに渡された機密性の高い情報だったと報じた。

 会談にはラブロフ外相のほかに、昨年の大統領選挙時からトランプ陣営の関係者と何度も秘密裏に接触していたとされるセルゲイ・キスリャク駐米ロシア大使も同席している。2008年から駐米大使を務めているキスリャク氏は、以前にCNNが「アメリカ国内の政府職員などをロシア側の情報提供者に仕立てるリクルーター」として報じられたことがあり、ロシア外務省が激しく抗議したこともある。ラブロフ外相とキスリャク大使に伝えられた情報は、過激派組織「イスラム国」(IS)のテロリストがノートパソコンに爆薬をしかけ、探知されないまま機内持ち込みを可能にする技術に関するものであったとされる。

 ロイター通信は16日、米諜報機関関係者の話として、ロシア側に提供された情報はアクセスが最も厳しい「トップシークレット」に分類されるものであったと伝えている。機密扱いの情報にはランクがあり、情報の内容によって、「トップシークレット」、「シークレット」、「コンフィデンシャル」に分類される。

 トランプ大統領からラブロフ外相らに伝えられた機密情報は、もともとアメリカの同盟国から提供されたものであったが、イスラエルによるものであったという見方が強くなっている。各国の情報機関の間には、ある国から提供された情報を、事前に許可を得ない状態で他国に伝えることは御法度とする不文律が存在し、信頼関係の欠如は同盟国間における情報の提供や共有にも大きな影を落とすことになる。

 イスラエルの元国会議員で、1996年から1998年まで同国の情報機関「モサド」で長官をつとめた経験もあるダニー・ヤトム氏は16日、「機密情報の入手は、同時に情報源の特定を容易にすることを意味する。我々が入手した情報について、情報源が誰なのかをIS側が現在は把握していないとしても、第三国にわたることで情報源に危険が迫る可能性は高い」と、地元メディアとのインタビューで警鐘を鳴らした。

 ヤトム氏によると、これまで情報を第三国に提供する場合には、それぞれの軍の連絡官を経由して、米大統領とイスラエル首相の間で情報の提供を認めるかどうかの話し合いが行われてきたのだという。トランプ大統領がロシア側に提供した機密情報は、決して他国に口外しないように念を押されていたものとされており、長年にわたって続いてきたアメリカとイスラエルの情報共有に大きな影響を与えるのは必至だ。

トランプ大統領が中東外遊、22日にイスラエル

 トランプ大統領は22日、サウジアラビアからイスラエルに移動し、イスラエルのネタニヤフ首相、パレスチナ自治政府のアッバス議長と会談を行う予定だ。余談だが、サウジアラビアからイスラエルへの直行便は過去に存在せず、今回が初めての例となる。トランプ大統領とネタニヤフ首相の会談は、中東和平交渉がメインになるとの見通しが強いが、外遊前に発覚したロシアへの情報提供をめぐるイスラエルの対応にも注目が集まっている。

 トランプ大統領によるロシアへの機密情報提供の疑いを受けて、イスラエルの情報機関が他国との情報共有に慎重になり始めたとも。イスラエルの日刊紙「ハーレツ」は17日、イスラエルが戦略的理由から行ってきたトルコ情報機関との情報共有に慎重論を唱えている。

 トルコ国家情報機構(MIT)のハカン・フィダン長官は親イラン派として知られているが、これまではエルドアン政権との信頼関係のもとに情報共有が行われてきた。トランプ大統領が各国の情報機関の間に存在する不文律を無視する形で、機密情報を第三国に提供するという例を作ってしまったため、イスラエルにとって「長年の敵」であるイランに機密情報が渡らないかという懸念が生まれている。イランといえば、トルコだけではなくロシアも武器輸出などで接近を見せており、イスラエルにとっては頭の痛い問題である。

 アメリカが同盟国と行う情報共有といえば、第2次世界大戦後にアメリカとイギリスの間で交わされ、英語圏の3か国(カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)が後に加わったUKUSA協定が有名で、英語圏の5か国による情報の収集や共有は「ファイブアイズ」という別名でも呼ばれている。先月後半には、リゾート地として知られるニュージーランドのクイーンズタウン近郊でファイブアイズの会合が開かれ、解任される前のコミーFBI長官も出席していた。トランプ大統領のラブロフ外相への情報提供は、70年近く続いてきた同盟国間の信頼関係にも少なからず影響を与えそうだ。
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■仲野博文(なかの・ひろふみ) ジャーナリスト。1975年生まれ。アメリカの大学院でジャーナリズムを学んでいた2001年に同時多発テロを経験し、卒業後そのまま現地で報道の仕事に就く。10年近い海外滞在経験を活かして、欧米を中心とする海外ニュースの取材や解説を行う。ウェブサイト(http://hirofuminakano.com/)

 

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