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改正か? 廃止か? 60年前に施行された製茶条例に揺れる静岡県

THE PAGE - 8月11日(金) 10時40分

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(THE PAGE)

 茶どころ静岡が製茶条例をめぐり揺れている。発端は県が条例の廃止を打ち出したことにある。ところがパブリックコメントは反対意見が大勢を占め、県は条例廃止案の9月県議会提出を見合わせることに。県担当者は「きちんと見極める必要がある」(茶業振興課)と話していて、今後、業界関係者などと協議を図り対応を決める方針。そもそも静岡県の製茶条例とは、どのような条例なのか? そして県はなぜ廃止を打ち出したのか?

県「多様な茶の開発が行われている現状に即していない」

 静岡県の製茶条例、正式には「静岡県製茶指導取締条例」という。昭和31(1956)年4月に施行されたこの条例は、その目的について「製茶の改善指導並びに不良製茶の製造、加工及び販売を防止することにより製茶の声価を維持すること」(第1条)と定めている。

 つまり、静岡県産のお茶の品質を担保する茶産地ならではの条例なのだ。しかも、理念を示したものではなく、違反業者には懲役などの罰則を科す厳しい内容だ。ただし、県によると、同条例違反での検挙実績はないとのこと。
 静岡県産のお茶は、同条例で製茶が規定され品質が担保されているのだから、消費者にとっては安心安全につながり、生産者にとっては産地の品質を保障する有効な条例のように思えるが、その条例を県はなぜ廃止しようとしているのだろうか?

 県お茶振興課は条例について「施行から約60年が経過しており、消費者の茶の好みの変化とともに多様な茶の開発が行われている現状に即していないなど課題が生じている。条例を廃止しても県民生活に影響を与えることはない」として廃止を打ち出した。

 お茶振興課によると、特に現状に即していないのが禁止行為を定めた第4条の条文の第2項、「物料を用いて製茶を着色し、又は異物を製茶に混入すること。ただし、知事が別に定める場合においては、この限りでない」との規定。製茶時の着色、異物混入の禁止を定めた条文だ。

 県によると、異物とは茶葉以外のすべての物を指し、製茶製造と加工において茶葉以外の物を入れる時は知事の許可が必要になる。過去には、量を重くみせて高く買い取らせようと、お茶の中に石を混ぜて売るなどの悪質な行為もあり、こうした条文が作られたようだ。
 
 しかし、食品衛生法や食品表示法など食品に対する法整備が進んだ今日、条例で規定している内容は既存の法律によって対応することが可能だと県担当者は説明する。

 一方で、消費者のし好に合わせて、香りづけとしてフレーバーを入れたお茶などが開発されており、条例がこうした茶製品の開発の”足かせ“になっていると指摘する。そして、条例廃止を打ち出した背景には、業界からの要望もあることを明らかにした。

業界団体「時代に合った内容に改正を」

 「確かに昨年、自民党県連に条例について要望書を出しました。しかし、その内容は時代に即した条例に改正するよう求めたものです。具体的には知事申請の簡素化です。条例の廃止を求めているわけではありません」。茶商や生産者でつくる県内最大の業界団体、公益社団法人静岡県茶業会議所の役員はこう話し、県との温度差をのぞかせた。

 この役員の説明によると、同じフレーバー入りのお茶を作るのに、会社ごとに県に申請をする必要があり、こうした県への事務手続きの簡素化を求めているという。また、現状では県に対して毎年、実績報告を行わなければならないが、こうしたことも簡素化して欲しいと要望しているという。

 県が条例廃止を打ち出してパブリックコメントを求めたところ、反対意見が続出。県内最大の茶産地、牧之原市の市議会は、着味着色しない静岡茶を堅持するよう県に申し入れることを決めるなど条例廃止に反対する動きが活発化した。

 県は現在、果物などのフレーバーをお茶に入れることを認めているが、着色や発色につながる重曹やグルタミン酸を入れることは認めていない。

 しかし、重曹などを入れることは食品衛生上の違反行為ではない。条例を廃止することにより、お茶の着味着色が野放しとなり、産地としての信頼を失うことへの危機感が根底にある。

 パブリックコメントを受けて県は、条例廃止案の9月県議会への提出を見合わせた。「きちんと見極めていく必要がある。性急に取り組むつもりはない。腰を据えてしっかり考えていきたい」とお茶振興課は話している。

ミント、桃、ショウガ茶も

 沼津市に店舗を構えるまるも茶店。店舗入り口には「フレーバー茶、ぶどう冷茶、ももの冷茶」と記された看板が立てかけられ、店内に入るとミント、桃、ショウガ、柚子などさまざまなフレーバー入りのお茶が販売されていた。

 ミントの冷茶は店内で試飲もできる。飲んでみると、お茶の味にミントのすーっとした感覚が加わり、なんとも爽快なお茶だ。「エステやネイルの施術後に欲しいといって購入される方も多いんですよ」と店長の三須至高さん。同店では28種類ものフレーバー茶を扱っている。

「若い人はペットボトルでしかお茶を飲まなくなってしまった。若い人に急須でお茶を飲む文化を伝えるにはどうしたらいいのか、そうした思いからフレーバー茶を手がけるようになったのてす」と話す。フレーバー茶を扱うようになって、イベントなどに呼ばれる機会が増え、イベント会場でお客さんに様々なフレーバー茶をふるまって喜ばれている。

揺らぐ茶産地としての地位、迫る鹿児島県

 県のお茶白書によれば、静岡県の茶算出額は平成4(1992)年には862億円、2位の鹿児島県(224億円)に大きく差をつけて茶産地としての揺るぎない地位を誇っていたが、平成27(2015)年には306億円にまで落ち込み、2位の鹿児島県(227億円)が迫っている。

 しかし、なによりも、かつて1500億円あった全国の茶産出額が900億円台にまで右肩下がりに減ってきている。条例をめぐる問題の背景にはお茶をめぐる危機感がある。

 まるも茶店店長の三須さんに条例について聞くと、「条例についてはともかく、なんらかの新たな対策を打たなければ、お茶の文化が絶えてしまうのではないかと思います」と話していた。

 

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